■どのような時に従業員は労働基準監督署へ相談するか~休業手当編~
【「思っていたことと違う」がきっかけとなる】
労働基準監督署へ行くと様々な相談をしている声が聞こえてきます。これは盗み聞きをしようというようなことではなく、聞こえてしまうのですね。
「なぜ従業員は労働基準監督署へ相談するのだろうか?」ということを考えることがあるかもしれませんが、相談内容は十人十色です。
しかし相談へのきっかけは共通する部分もあり、「自分の思っていたことと違っていた」ということから相談にいくものです。
先日は、アルバイトのシフトに入っているのに「暇だから帰っていいと帰らされてその分の給与がもらえなかった」ということが「思っていたことと違う」につながって相談をしていました。
【毎月の収入を予定している人はたくさんいる】
この相談の光景は、何度も見ています。時間給や日給の方に多いと思いますが、今月はどれだけ働いて、どれくらいの収入があるかということを計算しています。
それを踏まえて、「節約しよう」とか「これを買おう」という選択をしているのですね。
過去に見た光景で、「暇な時は帰ってほしいのだ!勝手に収入の予定をしてもらっては困る!こちらにも都合があるのだから」と労働基準監督署で怒鳴っている経営者の方を見たことがありますが、労働基準監督署には通用しません。
雇用契約により、契約をした労働時間については、暇だから・今日は人が揃っているからという理由で支払いなしということにはできないのに、「帰っていいよ。給与は払わないけど・・・」とやってしまうから「思っていたことと違う」につながってしまうのですね。
【労働基準法26条:休業手当】
労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき休業について、当該労働者に平均賃金の6割以上の手当を支払わなければならないと定めています。この休業とは、一日の労働時間の一部についての休業や、個別的な人事措置としての休職も含まれるとされています(昭和27年8月7日基収3445号)。
【従業員が勘違いをしていることもある】
「思っていたことと違う」が労働基準監督署への相談のきっかけになるのですが、その思っていたことが勘違いということも多くあります。
休業手当のことで言うと、その日に実際に働いて得ることができる給与額が、平均賃金の60%以上であれば、その日についての休業手当は支払う必要はありません。この場合は、労働基準法違反とはならないのです。
しかし、その日に実際に働いて得ることができる給与額が、平均賃金の60%未満であれば、支払わないことは労働基準法違反となります。その日に実際に働いて得ることができる給与額がいくらかによって労働基準法違反かそうでないかが分かれるわけです。
【労働基準法違反でないならいいだろうには限界がある】
労働基準法違反ではないなら暇な時に早く帰してもいいだろうという考えは、労働基準法という法令を守るという点では良いかもしれません。
しかし、人手不足が叫ばれる社会情勢において、従業員も職場を選択します。労働基準法違反にならないことは大切ですが、労働基準法違反ではないからを続けて「思っていることと違う」を招くと空洞化が進みかねないということを認識して、雇用契約書の作成や従業員とともに快適な環境ができるよう就業規則の作成などを行っていきましょう。
お問い合わせ電話番号:052-414-5603(2017年3月5日掲載-21)