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■従業員に職種や勤務地の変更を命じることに問題が生じることはあるの?~東京地裁判決より~

従業員に対して転勤を命じたり、例えば、現場の仕事を経験した上で営業職に転換するなど職種の変更をすることは日常的に行われていることです。
 
 会社によっては、従業員の希望を聴取する場合もありますが、希望を優先していては戦略的な人事はなかなか行えないことから就業規則等に勤務地の変更や職種の転換に関する記載をして、業務命令として実施するパターンが多いですね。
 
 業務命令だからやむを得ないということでは済まないこともあり、業務命令の有効性が法廷で争われることもあります。
 今回は、勤務地の実質的な変更について争われた案件です。
(出典:YAHOO!JAPANニュース:読売新聞)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170321-00050125-yom-soci
 

【業務上の必要性があったかどうかが判断のポイントとなる】

業務命令が会社の裁量の範囲内で有効となるための判断材料として、業務上の必要性があるか・ないかが判断を左右する重要なポイントとなります。
 
 例えば、退職の申し出があり、欠員が生じたので他の支店にいた従業員に勤務地変更の辞令を出したとか、新しいプロジェクトのためにそのプロジェクトに生かすことができる経験をしている従業員を業務命令で集めたというような場合は、業務上の必要性が高いものと言えるでしょう。
 
 一方で何となく嫌いだからというような理由で業務命令を出したのであれば、業務上の必要性は低いと言えます。
 
 会社としては、安定した運用をしていくために異動の業務命令などをする際には、業務上の必要性を備えておくことが良いでしょう。
 

【労働組合に加入した組合員を毛嫌いすることは不可】

今回の案件では、下記の2点が裁判官より指摘されました。
 
■会社は労働組合を嫌悪している
■会社は労働員を排除する目的で勤務地の変更をした
 
 会社は合理性がある勤務地の変更と主張しましたが、この主張は通りませんでした。労働組合や労働組合員を毛嫌いする行為は、裁判ではマイナス要素となることがはっきりしています。
 

【業務上の必要性がなかった場合はどうなるか】

業務上の必要性がない場合は、どのようになるかというと、今回のケースでは
 
配置転換命令が無効と判断されリセットされました
 
 たとえ就業規則に根拠があっても、裁判では無効とされる場合があることを認識しておかなくてはなりません。
 
無効とされた場合には、無効の判決とともに慰謝料の支払いを命じられる場合もあります。今回のケースでは30万円の慰謝料と判断されました。慰謝料は個別ケースで変わりますので参考数値になりますが、リセットされるだけではないことを認識しておきましょう。
 

【人事異動に関する裁量権は会社にあるが、悪意のある目的は危険】

人事異動に関するトラブルは、表になるものは氷山の一角であり、実際にはかなりの数があるものと推測されます。
 
 会社の人事権の裁量が制限をされてしまうと、事業そのものに影響が及ぶことから会社にかなり広範囲の裁量が認められています。よって業務上の必要性があるのであれば自信をもって進めていただければ良いでしょう。
 
 そのような中でも従業員を排除しようとか、理由なき人事異動など悪意を目的としたものは危険であることは認識をしておかなければなりません。
 

【じゃあ何をしなければいけないのか】

まずは就業規則の確認をしましょう。単純に教科書通りの記載では不適切なこともあるのです。それらしいことが書いてあるからは「危険」ですよ!

★就業規則に配置換えや職種の転換に関する記載はあるか
 ★記載がしてあっても実態と比較して適切な記載か
 ★自社の人事異動の実績を検証(業務上の必要性はどうか?)
 
 中部労務管理センターでは、一緒に就業規則を見ながら実態と照らし合わせてトラブルにならないようお手伝いをいたします。

お問い合わせ電話番号:052-414-5603(2017年3月25日掲載-41)