■仕事に必要な資格取得のために終業時間後に学校へ行かせる場合は労働時間となるか
資格の学校や通信教育のCMを見ていると「自分にもできるかもしれない」と思って挑戦したくなりませんか?個人的にはそう思ってしまうのでいいCMを作るなぁと感心してしまいます。
資格を持っていることが就職や自分が就きたい職種への転換などに有利な材料となることがあります。会社によっては、資格を持っている従業員がたくさん在籍していることが会社の価値を上げると考えていることもあり、資格取得支援制度を充実させているところもあります。
【厚生労働省のガイドラインにヒントあり】
厚生労働省が2017年1月20日に公表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に答えのヒントが書かれています。
ガイドラインには参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務の必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当することと書かれています。
義務や指示(業務命令)によるものは労働時間と考えられているわけです。
つまり、終業時間後に会社の指示(業務命令)で学校へ行かせる場合は、義務ということになりますから労働時間ですね。
【会社と労働者の義務かどうかの認識はズレが生じやすい】
労働基準監督署の調査において、これまでも教育訓練が労働かどうかという議論はいくつもありました。今回のガイドラインは目新しいというものではなく、従来からあった考え方がよりはっきししたというものです。
会社は任意と考えているけれど、従業員は義務だと思っているというケースは、かなり多く、この溝はなかなか積極的に解決に臨まないと埋まらないものです。
ではこの曖昧な状態で労働基準監督署の調査を受けるとどうなるかいうと、場合によっては、従業員に聴き取りなどを実施し、それが義務だったと判断されると労働時間となり、不払いが生じている場合は、支払うよう是正勧告を受けることになります。
【就業規則よりも実態がどうなっているか検証を】
ズレが生じることは上記の通りですが、就業規則に資格取得支援制度の記載がある場合は、「任意」となっていることが多いのですね。しかし蓋を開けてみると従業員の認識は「義務」と感じているという状態が危険です。
就業規則が形として「任意」となっていても実態が「義務」であれば労働時間と判断されてしまう可能性が高いと言えます。まず検証をするべきは実態です。
■自分が必要だと思うならやりなさい。おれ(上司)は必要だと思うぞ
■○○は受講していた
■他のみんなは参加するのに
■チームワークを乱すな
このような発言で義務と取るか任意と取るかは個人の主観が左右しますが、義務と捉えられても仕方がないという発言は控えましょう。
【副作用が出てしまう可能性がある資格取得後の退職という問題】
従業員が資格を頑張って取得して良かったと思っていたら、その従業員から退職届が出てきたという資格取得支援制度を運用している会社の独特な労務問題があります。
これは御社だけではなくどこでも出る副作用です
これに納得がいかないという気持ちはよ~く分かりますが、どうにも納得ができないということであれば、解決策は資格取得支援制度をやめることです。
もしくは、少しでも納得のいく運営ができるように制度を構築することです。
資格取得支援制度は、縁あって勤めてくれた従業員のために会社が投資したものという側面があることを認識していただければ、良い制度が構築できますのでぜひお問い合わせください。
お問い合わせ電話番号:052-414-5603(2017年4月14日掲載-61)
【本日のブログに関するリーフレットや参照ページなど】
(労務管理資料お問い合わせ番号:00035:厚生労働省)
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000152692.pdf
※資料等のリンクはブログ投稿時点でリンクをしていたものです。リンク先が変更した場合など見ることができなくなることがございますのでご了承ください。