052-414-5603 営業時間 10時〜19時

メールでお問合せ

■従業員の希望聴取が不十分な転籍は無効~東京地裁判決より~

転籍については、原則として従業員の同意を得なくてはならないものですが、すべてのケースで手順を踏んで同意をされているわけではないと考えられ、法廷でその有効性が争われることがあります。
 
 東京地裁にて子会社への転籍を無効とする判断がされた事例が報道されました。
(出典:YAHOO!JAPANニュース:読売新聞)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170328-00050136-yom-soci 
 

【分社化を利用した解雇という主張】

今回のケースは、労働者が勤務していた工場が子会社として分割され、転籍をしたということからスタートします。
 
転籍をしてしばらく経過した段階で子会社が解散となり、当該労働者は解雇されたという状況です。
 
 原告の弁護士のコメントとして「分社化を利用した解雇の乱用防止につながる」と報道されていますが、分社化の目的に労働者の削減があるとするならば、裁判所に認定されてしまうと転籍が無効と判断される可能性は高くなるでしょう。
 
転籍にかこつけて労働者を退職させることは転籍自体が無効になると認識をしておかなくてはなりません。
 

【退職後に転籍が無効となるとどうなるのか】

今回の判決でも示されているように、給与や賞与の支払いを命じられることになります。その間に実際に労務の提供があったかどうかは関係なく、会社は支払わなくてはならないこととなります。
 

【社会保険の資格も戻される】

給与や賞与の支払いに加えて社会保険の資格喪失についてもその判決に従って取り消されることになるため、当該期間の事業主負担もしなくてはなりません。
 

【根拠は商法附則にあり】

商法附則により、分割等に関する情報提供・説明を十分に行い、労働者の希望を聴取して協議をしなければならないとされているところ、今回の事案では
不十分と判断されてしまったものです。
 
 会社分割などによる転籍には、事前から説明会を実施するなど十分な説明を行い、個別面談などにより希望を聴取して、問題点が予測されるような場合は、協議を繰り返し行い説明を尽くすようにしなければならないでしょう。
 
お問い合わせ電話番号:052-414-5603(2017年3月31日掲載-47)