■始業時間前に自主的に働いた場合は労働時間となり残業手当の支払いが必要か
始業時間の前に出勤をして始業時間とともに業務に従事する態勢にすることは一般的に行われていると思いますが、中には「渋滞するから早く来るようにしている」とか「落ち着いて食事がしたいから会社に早く来て会社で食事をする」ということで始業時間よりもかなり早く出勤する従業員がいるのではないでしょうか?
タイムカードなどで勤怠管理をしている場合は、くっきりと早く来た時間が記録される訳ですが、この時間が労働時間となるかどうかはよく議論となる事項です。
【仕事をしていればその時間は労働時間】
始業時間よりも早く出勤して、食事をしているとか、自身が読みたい雑誌を読んでいるということであれば、その時間は労働時間とはなりません。よって残業手当の支払いも必要ありません。
一方で「業務に関するメールを確認していました」とか「本日の会議の資料を用意していました」というような場合は、労働基準監督署の調査では仕事をしていると判断されますので労働時間となります。
これに対する残業手当が支払われていない場合は、賃金不払残業として指導を受けることになります。
【過重労働を防ぐために早く出勤をした従業員を早く帰すことは選択肢のひとつ】
働き方改革の一環でノー残業デーや一定時間で終了など「早く帰る」ことを開始したという報道もちらほらされていますが、過重労働を防ぐことが目的であれば非常に有効です。
早く出勤した従業員を早く帰すということも過重労働を防ぐためには良いことですが、懸念事項があって社内のまとまりが悪くなることがあります。
始業時間・終業時間を前後させる場合は、ルールを決めてから実施することが良いでしょう。例えば回数を決めたり、グループ化して実施するなど決めておくと上記の懸念が少し解消されます。
【労働基準監督署は始業前の時間をどう見るか】
労働基準監督署の調査では、担当する労働基準監督署にもよりますが、始業時間よりも30分程度早く出勤しているものがあると、その時間何をしていたのかを聞かれることがあります。「労働時間だ」と決めてくるのではなく、何をしていたのか報告を受けた上で労働時間かそうでないかを判断する流れです。
労働基準監督署からの要請により、始業時間前の時間に何をしていたか調査した段階で仕事と考えられるものに従事していると遡及して支払うよう指導を受けることになってしまいます。
よって日常的に始業時間前の行動をみておかなくてはいけないのです。何をしていたかまったくわからないとなると労働時間と言われても返す根拠がないためです。
【従業員からの指摘により未払いとなる場合も】
残業と比べると始業前の時間については、管理をしていない事業所が多いと思います。
仕事をしていないだろうという前提で運用をしていると、従業員から指摘を受けて賃金未払残業が発覚することがあります。
就業時間後の残業だけではなく、始業時間前の残業も確認するようにしましょう。
お問い合わせ電話番号:052-414-5603(2017年4月8日掲載-55)